アムリトサルの中心部で“オートリクシャ”ドライバーに声をかけられる理由の90%が「ボーダー(国境のセレモニーを見に行かないか?)」です。
なぜ、そんなに頻繁に声をかけて来るのか疑問に思っていましたが、行ってみてビックリ。パキスタン国境では想像を絶するセレモニーが毎日実施されていました。
今回は、停戦中、インド、パキスタンの国境で執り行われている儀式についてお伝えします。
インド人が数千人押しかけるパキスタン国境
インド北部の都市アムリトサルはパキスタンと国境を接しています。
アムリトサル中心部から30㎞足らずの場所に敵対国家の軍隊が配備されていることを考えるとぞっとしますが事実です。
そんな状態でも毎日5000~6000人の観光客が国境を目指します。
国境に行く理由はパキスタンに行くためでなく、国境で行われているインド国境警備隊の国旗降下式を見に行くためです。
国境の町「ワガ」までの交通手段はバス、タクシー、オートリクシャのどれか。
「ワガ」までの移動時間は1時間。儀式の始まる時間が17時前であると考えると14時発のバスに乗るのは早すぎるうえに片道350Rs(600円)は高い。
であるなら、15時頃出発の乗合オートリクシャ、往復200Rs(340円)を使うのが時間と交通費の節約になると思い、昼過ぎに50Rsデポジットをドライバーに払って席を確保しました。
オートリクシャは12人乗っても大丈夫
15時ピッタリに待ち合わせ場所に到着するも、さすが、インド人。オートリクシャは出発しそうにありません。
ドライバーは物理的に乗せられる限界まで客を詰め込むつもりです。
そもそも、オートリキシャの排気量は200~300㏄、3人乗りです。それを改造してドライバーを含め12人乗せて走るのが普通。警察も取り締まりません。
中近東の隣に位置しているのに石油が産出しないためガソリンは輸入品。
アムリトサルのガソリンは東京よりも高いことに驚きました。
「高いガソリン代をカバーする方法は過積載」、「安く移動するために乗客も我慢」。インドの悲しい現実を目の当たりにしました。
10分かけて満席にしたあと、オートリクシャは勢いよく走りだしましいた。
乗客の合計体重700~800㎏。それだけ搭載しても直線道路では時速50㎞で走行します。しかし、事故ったときは・・・。
「ワガボーダー」からスタジアムの移動
予定より10分遅れて「ワガボーダー」の駐車場に到着しました。
そこで、新たな問題に遭遇しました。国旗降納セレモニーが実施されるスタジアムに「手荷物を持ち込めない」というのです。
ドライバーと荷物預け所スタッフの説明によると、パスポートやお財布などの貴重品、水、オペラグラスなど観戦に必要なモノ以外は預け所に置くルールになっているようです。
しかも、その料金が往来の交通費よりも高い。
事前情報でも引っかからないことだったので、ドライバーと店が組んでいるとも考ましたが、数千人が1か所に集まる場所、テロ防止の観点からみると有り得るルールです。
また、到着時間が遅れたことで、式典の開始を見落とす可能性が高いことに焦りを感じました。
結局は、冷静な判断ができない状況で、いい値を支払い、引き換え券を手に会場を目指しました。(心の余裕がなかったため、支払った金額も預り所の写真も撮っていません)
駐車場からスタジアムまでは約1㎞の徒歩移動、もしくはリクシャーを使う以外に選択肢はありません。
道の両サイドにはドリンクやスナックを売る、顔にインド国旗のペイントを描く露天商が待ち受けています。
毎日15~19時、数千人が往来する場所なので、豊富な需要を当てこんだ物売りが数百人待ち構えています。
1㎞進むとセキュリィティチャックが見えてきました。
外国人は向かって左側の空いているレーンを通ることができるので待ち時間1分。インド人レーンは男性女性に分かれます。女性の検査はカーテンの中で行われるため500人位が列をなしていました。
検査は軍人の前を通過するだけ、荷物を持っていなければ何も言われることはありません。
凱旋門の様な巨大スタジアム
手荷物検査場を抜けて歩くこと300m、巨大な凱旋門のようなスタジアムが見えてきました。
既に、会場からは爆音と歓声が鳴り響いています。
出遅れ感を感じながら早足でスタジアム内を散策するも1~3階は満員。
仕方なく4階に場所を確保しました。
場所といっても、スタジアム内に椅子が設置されているのは1~2階だけ。
3~4階は立ち見席です。
スタジアムで行われているイベントは、インド国境警備隊(BSF)のMCが愛国心を煽るマイクパフォーマンスをする。
その後にインド国旗を持った女性や子供がパキスタン国境200m付まで行進してワアワア言葉を発する。
それを眺める熱狂した観客が歓声をあげる。
MCが何をいっているのかは分かりませんが、私は「パキスタンを煽ることを言わないことを祈るばかりでした」。
代わり映えしない出し物が1時間以上続くのに群衆の熱狂は冷めません。
むしろ、遅れて来た観客が4階に増員され会場のボルテージは高まります。
後ろの客が次々と前に押し出してくるので、スリ被害もですが、数百人を巻き込む将棋倒しが起きてもおかしくないと判断して通路に移動しました。
結局、旗が下りたのは18時過ぎ。リクシャードライバーに指定された集合時間は18時10分。肝心の降下するところは1階のゲート隙間から遠目で見届け、早足で戻りました。
結局、乗客が揃ったのは18時40分。
しかし、だれも文句を言う人はいません。
これが、インドタイム。
学びの多いインド国旗降下式
降下式の内容にネガティブな文を書きましたが、結論から言うと「参加して凄くよかった」と思いました。
毎日、数千人のインド人が休戦中の国境で旗を降ろすのを観て熱狂していること、軍人といえど、MCや音響を上手に操つる能力が求められる部署があること。
毎日5000~6000人が移動するために大量の車両とガソリンが使われていること。
大量の人が押し寄せる所には大量の物売りが集まる市場原理があること。
国境付近の川岸に、複数の掩体壕が設置されて有事に備えている現実。
など、多くの気付きを得られました。
まとめ
陸続きの国境を持たない日本にとって陸路国境はとっても興味深い場所です。
しかも、休戦中とはいえ大量の軍人が配備されている軍事施設内で行われる降下式を観られる場所はそうそうないと思います。
そもそも、国境とは確定させるのに、国家が多くの兵隊と国力を動員して得た結果です。
そんな、現実に気づかせてくれるのが「ワガボーダー」です。
気乗りしなかった私に行くことを強く勧めてくれた友人に感謝です。
次回は、インド、パキスタン国境超えについてお伝えします。
訪問時期:2023年4月
確かに、、国境の概念はあまりないかもと思いました。ウクライナの事もあるし、備えあれば、憂いなし、出船の精神で何かしらの準備は必要かもと思いました
はい、事前準備をおろそかにしていると痛い目にあります