イスラム教徒にとって重要な宗教儀式、ラマダン。
この時期は、日の出から日没まで、すべての飲食・喫煙・性行為・悪い行い(喧嘩など)を断つ神聖月です。
実施時期は3月~5月中の約30日。
イスラム暦で定められるので、毎年、約2ヶ月のばらつきがでます。
私がパキスタンを訪れた時期は2023年4月3日~12日。
ラマダン中だったので、飲食店は「日中の営業を自粛」、「テイクアウトだけ」、「カーテンの裏でこっそり営業」、さまざまなお店を目にしました。
今回は、パキスタンのラマダンの現状についてお伝えします。
イスラム教徒にとって重要な宗教儀式ラマダン
ラマダンの目的は、日が出ている間「自分の欲望を抑えることで自身の信仰心を深めること」といわれています。
乳児や子供は食べ物を口にできるようですが、大人は、軍人や警察官であっても水さえ口にしないそうです。
さらに、この期間は毎日、モスクを訪問して祈りを捧げます。
特に、1日の4回目に当たる日没時の祈りをモスクで済ませたあとに、食事(朝食)を摂る方が多いようです。
ラマダン中、食事することが許される旅行者
ラマダン中、日の出前に食事を済ませるには早朝にレストランに入る必要があります。
滞在中、早朝に起床しなかったので、飲食店の状況を見ていませんが、日中は、肉や野菜、米など食品を売る店は営業していても飲食店の多くはシャッターを閉めて自粛しています。
稀に、営業しているのは、屋台や軒先でサモサやポテトを揚げているテイクアウト専門店ですが、購入する客はいても口にする人は誰もいません。
「ギルギット」バスターミナルで、乗り換えバスを待つタイミングにドリンクを飲める場所がないか探したところ、入り口を布で覆った何屋か分からない店を発見しました。
ひょっとして、と思い布をめくったら営業中のレストランでした。
恐る恐る入店、午前9時で半数の席が地元の方で埋まっていました。
異教徒の私としては、「開いていて助かった」のですが、ラマダン中に、多くのイスラム教徒が食事をしていることに驚きました。
人は生き物なのでお腹が減ったら何もできません。また、お腹一杯食べることが当たり前になっている現代人が食を我慢すること自体難しいことなんだと思います。
後日、店の入り口を覆っていた布に書かれていた文字の意味を地元通訳に質問しました。
回答は「Journey people stay here. Non smoking area」
意味は、「旅行者が滞在している、禁煙」
旅行者はイスラム教徒であっても断食から解放されるようです。
しかし、首都の「イスラマバード」や人口3千万人を超えるメガシティ「カラチ」では、「警察が飲食店を厳しく取り締まっている」と耳にします。
パキスタン国内でも、都市部と田舎、旅行者が多いエリアなど場所により厳格さが異なるようです。
異教徒にも提供されるモスクの食事
「ラホール」からバスでイスラマバード」に到着した時間は日没直後でした。
ターミナル近くのモスクを通りかかったときに、多くのイスラム教徒が食事をしている姿が目に入りました。
立ち止まって眺めている私を見た現地の方が「食事するか?」声をかけてくれました。
恐る恐るモスクの食堂に立ち入ると、持ち帰りの用のランチボックスは残っていませんでしたが、残り物のフライドポテトとドライフルーツを箱に詰めて手渡してくれました。
異教徒であっても食事を分け与えてくれるイスラム教の懐の深さに感謝できる瞬間でした。
旅行に帯同した通訳やドライバーは旅行者扱い
郊外に遠出したとき、現地通訳やドライバーが昼食を摂るのか出方を伺っていると、私と同じテーブルについて普通に食事をしていました。
「雇い主に気を使わせないために同席して食事したのか?」それとも、「奢ってもらえるから食べた?」、「旅行者のアテンド中なので旅行者扱いになる?」
理由は分かりませんが、「ラマダン中だから」といって拒んだ人はいません。
彼らの心の内を聞くのも野暮なので、質問しませんでしたが、残念だったのは、御馳走しても、感謝の言葉を述べられないことでした。
「お金を持っている者が支払うのが当たり前」この様な考えが根強いのかもしれません。
ラマダン中に提供してくれるお土産屋のドリンク
帰国日、「イスラマバード」中心部のお土産屋に立ち寄りました。
余った現地通貨を価値の落ちない古銭や銀貨に変えるためです。
4~5千円分購入して店を出ようとしたときに、店員から「ドリンクを飲むか?」と聞かれました。イスラム圏では、来店した客にお茶をふるまう店が多いイメージがありましたが、ラマダン中にもふるまって頂けました。
もちろん、店員はドリンクを口にしませんが、旅行者に飲み物を提供することはマナー違反にならないようです。
食事を分け合う「おすそわけ文化」
「イスラマバード」中心部から空港に向かうメトロバス乗り換え時に日没を迎えました。駅構内で働く案内係、セキュリティスタッフは自分の持ち場で弁当を広げて食事を始めます。
12時間以上食事を摂っていなかったので誰も止めることはできないと思います。
むしろ、奥さんが作ってくれた料理を嬉しそうに頬張る姿を見て、思わぬ笑みがこぼれました。
一つ驚いたのは、食べている職員の横を通過したときに、カットしたリンゴやドライフルーツをおすそわけしてくれた方が数名いたことでした。
差し出されたとき、受け取っていいのか悩みましたが、彼らは人に分ける分も含めて用意しているように見えたので、快く受け取りました。
きっと、断食が明けた喜びを多くの人と分かちあうことが彼らにとっての道徳なのだと思います。
また、ラマダンが明けた直後のメトロバス車内は、食品の包み紙や清涼飲料の空ボトルが大量に放置されるので、それらを片付るスタッフが配置されていました。
まとめ
パキスタンのラマダンは、都市部が厳格であり、田舎に行けば行くほど緩いイメージがありましたが、小さな村落では逆に厳格になるようです。
緩い場所は、都会と田舎の中間で旅行者が滞在、通過する場所だけのようです。
ラマダン中は、食事に大きな制限がかけられますが、多くのイスラム教徒が旅行を自粛する時期なので、リゾート地はもちろん交通機関が空いています。
異教徒にとって旅行しやすい時期といえます。
次回、パキスタンに行くときはラマダン期間を狙って南部を訪れたいと思います。
訪問時期:2023年4月
ラマダン、食事️をしない事もまた新たな気づきがあるのかも、と思いました。私などは食べすぎなので、たまには食べないのもありかもと思いました
常識も場所によって全く違う事がよく理解できました
是非、たまにファスティングしてみて下さい。