インド第3の都市コルカタからヒンズー教の聖地バナラシに鉄道で移動しました。
運行距離962㎞、乗車時間14時間半。
1月の東北インドの気候を考えるとエアコンは不要と判断してスリーパー(SL)クラスを選びました。
結果、吹き込む隙間風に体温を奪われ続けたほか、入れ替わり立ち替わりする無賃乗車インド人に安眠を妨害されて体調を崩しました。
今回は、コルカタのハウラー駅~バナラシ駅、寝台列車の旅についてお伝えします。
インド国鉄最大の乗降者数、ハウラー駅
旅の起点はコルカタの西にある「ハウラー駅(Howrah Junction Railway Station)」。インド最大の鉄道駅で1日の乗降者数100万人(世界第9位)。
つまり、24時間人がごった返す場所であり、怪しい人も少なからず出入りする場所。
駅の入り口にX線検査機が設置されていて手荷物検査に協力する必要がありますが、Dバック程のバッグはフリーパスです。
駅内は、アッパークラスの乗客が使うラウンジや様々なファストフード店があり、中央のベンチで待機できるようになっています。
席数が足らないからなのか、床に毛布を引いて堂々と仮眠するタフな人も100人ぐらい見られます。
久しぶりの鉄道旅、予期せぬ出来事に対処するために出発2時間前に到着しましたが、電光掲示板は1時間後に出発する便のプラットフォームしか表示していません。
昼前に事前調査しにきたときに、切符売り場スタッフにで出発ホームを確認したときは「12番ホームか16番」と、曖昧な回答が返ってきました。
切符を売っている人が理解していない。
出発1時間前でないとホームが決まらない仕組みなのかもしれません。
コルカタにある巨大駅舎
ハウラー駅には、23のプラットフォームがあり、駅舎が2つに分かれています。
乗車プラットフォーム1~15番は向かって右の「Old complex」。
16~23番は左の「New complex」に行く必要があります。
その上、列車の全長は300mあります。
余裕を持って駅に到着しておく必要があります。
私の乗る列車の出発時刻は20時。
電光掲示板に乗場が表示されたのが19時。
列車がホームに到着したのが19時25分。
乗客が下車後、乗務員が点検を済ませて乗車が開まったのが19時40分。
ホームに乗り場を示す「SLRD」や「GS」の表示があるため、列車が到着する前に自分の乗る車両位置が分かるのは助かります。
乗車が開始されても列はなかなか進みません。
大荷物を持つ人、子供を抱える人が高い段差を登るのに手間取っているからです。
日本のプラットホームが乗降りしやすい高さに設置されていることが普通でないことを知りました。
乗車率160%オーバーの指定席
チケットを手に自分の席と思しきボックスシートに行くと、インド人家族が談笑しています。
あまりに堂々としているので、こちらの切符の見方が悪いのかと思いましたが、別の方が「その席は・・・」というと、そそくさと移動を始めました。
始めっから、無賃乗車するつもりで人の席に座る人が結構な数交じっているのです。
スリーパークラスは1ボックス6人で座る使用ですが、なぜか、8人が腰掛けているほかに、上段ベッドに2人寝ています。
つまり、始発の段階から4人チケットを持っていない人が混ざっていることになります。
「郷に入っては郷に従え」外国人が声を荒げたところで相手に伝わらないばかりか周りを敵に回します。
車掌が券札に来れば「切符を持っていない人がハッキリして別の席に移る」。
こんな風に思っていましたが、バナラシに着くまで車掌の姿を見ることはありませんでした。
インド鉄道のデメリット
列車は20時の定刻に出発しました。
インドのことなので30分は遅れると予想していましたが、運行が改善されたようです。
列車が走り出して困ったのは、窓がキチリ閉まらないため隙間風が吹き込んで体温を奪われることでした。
チャパティーを包んでいた銀紙を平たく折って窓の隙間を埋めましたが、列車の速度が速くなると風圧が高まって結局は吹き飛ばされます。
全ての規格が定められていてる、隙間がない日本社会のクオリティの高さに有難味を感じました。
22時半、全員が食事を終えたタイミングで中段ベッドを設置して横になることになりました。
上段の方は始めからベッドが設置されていますが、下段の人は中段の利用者がベッドを組み立てて移動してくれないと横になれません。
寝台列車を利用する方は、チケットを購入するときに上段シートを選ぶことをオススメします。
料金は同じだったはずです。
就寝前に向かいのインド人家族が、長さ2mのチェーンで家族の荷物をつないで南京錠で固定しています。
私も安全を期して自転車のワイヤーチェーンでバッグを車体に固定してから横になりました。
夜中に入れ替わる無賃旅行者
夜中3時にトイレに行きたくなって起きると、足元に大きな荷物が置かれて足の踏み場がありません。
仕方なく、体制を入れ替えて、通路の方に這い出ると、誰かが私の頭を抑えて呪(まじな)いを唱えながら、目の前に50Rp紙幣を出してきます。
ヒジュラ(女装した男)の物乞いが、施しを受けるために車内を移動していたようです。
寝ている時間にも寄付をもらうために車内をうろつく物乞いがいるとは恐るべし。
トイレに入ると、床に液体が広がっています。
1時間に30人が利用して1人5㏄的を外すと、1時間で150㏄。
出発してから7時間経過していたので1ℓ以上の尿が床に撒かれたことになります。
実際は手洗い所の水なのかもしれませんが、インド列車のトイレは時間が経てばたつほどカオスになる性質があるのです。
用を終えてベッドに戻った数分後に途中駅に停車しました。
昔と比べると、停車駅も停車時間も大幅に減って移動時間が短縮されたように思います。
そんなことを寝ぼけながら考えていると、荷物をドカッと置く音がしたあと、誰かが私の足元に腰掛けてきました。
「講義するべき?」「しない方がいいの?」判断できないまま寝落ち。
次に気付いた時は、人の尻も荷物も無くなっていて、新たな乗客が腰を下ろすことが繰り返されました。
私と同じボックス席の乗客は、始発からバナラシ下車でしたが、途中駅で無賃旅行者が入れ替わり立ち替わり座るので、荷物と履物の管理に気を付ける必要があります。
インド国鉄の弱者救済
バナラシ到着予定時刻は0930。
実際に到着したのは1130。
962㎞の区間を15時間半で移動したということは、平均時速62㎞です。
もちろん、この時間は停車した時間、スピードを緩めて走行した時間も含んでいるため、直線距離は80㎞前後で走行していると考えます。
時刻表どおり運行されると平均時速は71㎞。
巡行スピードは時速100㎞近くになるはずです。
私の乗った列車が2時間遅れた理由は明け方に濃い霧が発生していたからだと推察します。
インド鉄道のいい点は、水、チャイはもちろん、スナックやお弁当を売る行商が車内に売りに来るので移動中の飲食に困らないこと。
ボックス席に1か所、コンセントが設置されているのでスマホの充電ができることです。
難点は、無賃乗車する人に安眠を妨害されること、トイレがカオスなことです。
車掌が券札にこなかったことを考えると、下層クラスは、低所得者へのお目こぼし、鉄道会社の慈善事業なのかもしれません。
上記のような経験をしたくない方は、スリーパークラスより上の1A、2Aといったエアコンつきクラスを選んでください。
まとめ
下調べをしないで鉄道旅をしたことで、思わぬ経験をしました。
しかし、同席した方から、チャイやスナックを奢ってもらったばかりか、スイーツのおすそ分けを頂くなど、交流もできました。
バナラシ到着12分前に、ガンジス川に掛かる鉄橋を通過します。
進行方向左側にガートを見下ろすことができます。
地図ソフトで場所を確認しながら、橋が近づいたら出入口に移動して眺めてください。
きっと、バナラシ観光のよいスタートが切れるはずです。
次回は、バナラシ観光についてお伝えします。
訪問時期:2024年1月
1Rp=1.8円