北海道の東岸、国後(くなしり)島方向に伸びる「野付半島」。
地図を眺めると、釣り針が海に突き出たかのようなユニークな地形をしているため、誰もが興味を持つ場所です。
私が「野付半島」の存在を知ったのは3年前のツーリングのとき。Googleマップに表示された不思議な形に引かれて立ち寄りたくなりましたが、悪天候の中、根室~斜里まで知床峠経由で移動する必要があったので素通りするしかありませんでした。
今年は根室~斜里間を移動するだけだったので、半島に立ち寄ることができました。
今回は、北海道の東岸にある「この世の果てのような景色が広がる野付半島」についてお伝えします。
野付半島は土砂が堆積した砂嘴
「野付半島」は、知床半島方向から流れる海流が運んだ土砂や小石が堆積した砂嘴(さし)と呼ばれる地形です。
幅は広い所で2㎞、狭い所で50m程ですが、全長が28㎞あるため、膨大な砂が運ばれたことになります。
日本に在る砂嘴は全部で12か所。その中で最大の面積を誇るのが、ここ「野付半島」です。
数万年かけて堆積した土砂の上に草木が自生して独自の生態系がつくられます。
見所は、海水に侵食されて立ち枯れたトドマツ、「トドワラ」です。
トドマツは塩風に強い樹木ですが、地中に塩分が在れば自生できません。
雨や雪解け水が少しずつ塩を押し流し、樹木が生える土壌が整った後に自生して数が増えました。
数千年かけて作られた林は、近年の地盤沈下で海水を被るようになり、立ち枯れ、朽ち果てて「この世の果て」といわれる景色になりました。
膨大な時間の中で造られた大自然が広がる「野付半島」の入場料はゼロ円。
近くに立ち寄ったら絶対に観ておきたい場所です。
因みに、半島付近の海底は起伏が激く潮流が早いため絶好の漁場になっています。
特に、江戸時代~明治初期まで付近の港町は大変に繁栄していて「キクラ」という名の色町が存在していたそうです。
※「トドワラ」の他にもナラの木が自生しています。立ち枯れたナラの木を「ナラワラ」と呼ぶ。
ネイチャーセンター~「トトワラ広場」を結ぶトラクターバス
「野付半島」の観光拠点は、半島の付け根から先端方向に10㎞進んだ地点にあるネイチャーセンター。
駐車場、トイレ、レストラン、お土産屋が入る立派な建物で、屋外に「野付半島」のシンボルである高さ3mの石碑が立っています。
この場所から湾の内側に伸びる遊歩道があり、草花を眺めながら1㎞散策できます。
整地されていない道を歩きたくない方はトラクターバスで「トトワラ広場」まで移動することも可能です。
私は、往路にトラクターバスを使い、復路は歩きました。
行きがけにトラクターバスから“映える”ポイントを頭に入れ、復路に目を付けた場所で撮影したので時間を有効に使うことができました。
トラクターバスの料金は、片道500円(子供300円)、往復1000円(子供600円)。
片道の乗車時間7分。全国的にも珍しい乗り物なので、是非とも体験しておきたいものです。
「トドワラ広場」から砂嘴の先端までの距離は300m。木製の遊歩道から「この世の果て」といわれる景色を堪能できます。
私は植物に対する知見が乏しいため、その希少性に気付くことはできませんでしたが、キタキツネやシカの群を間近で眺めることができたのでとってもいい思い出になりました。
まとめ
「野付半島」は1960年と比べると600m伸びたといわれます。
その反面、沈下により面積は縮小しました。
江戸時代、原生林があったといわれる豊かな場所が環境の変化で「トドワラ」「ナラワラ」に変わっているのです。
訪れるときは、この様な背景があることを頭にいれて眺めるととっても意義深い観光になると思います。
今回の訪問は7月でしたが、雪化粧の「この世の果て」も気になります。
いつか、冬の北海道を訪れてみたいものです。
トラクターバスいいですね ぜひ乗ってみたいです
お子さんが乗れば喜ぶこと間違いなしですよ!