琉球王朝時代、“神の島”として崇められてきた「久高島(くだかじま)」
長い期間、地縁、血縁がない“よそ者”が来島しなかった場所です。
戦後、港湾施設が整備され、定期船が行き来するようになったあと、旅行者が行き来するようになりました。
といっても、沖縄に訪れる観光客は年間300万人いますが「久高島」まで足を延ばす人はごく僅か、自信持って地図上の島を指せる人は稀だと思います。
今回は、沖縄料理で使われる高級食材“イラブ―”の生産地、神の島「久高島」についてお伝えします。
久高島に渡れない人は乗船前に気分が悪くなる
「久高島」は、沖縄本島東南端にある知念岬から5km沖にある、周囲8.0kmの島です。
フェリーの乗船時間は15~25分、1日6往復運航しているのでそれほど不便に感じません。
人口は約200人、主要産業はモズク、海ぶどうを中心とした漁業。
昔から琉球王朝に献上する”イラブー”(ウミヘビの燻製)の供給地点。現在も”イラブ漁”並びに加工が行われています。
私が訪れたのは2021年12月3日。久高島行きフェリー乗り場「安座真港」に着いたとき港湾職員達が浮遊物を網ですくいあげている光景を見て以前耳にした話が頭をよぎりました。
“神の島”に行けない人が海を渡ろうとすると「船が欠航」もしくは「気分が悪くなって乗れない」。それは「何度トライしても同じ結果」。
「自分は行けない部類の人間だったのか?」と悩みながら受付で状況をたずねると、小笠原海底火山で噴出された軽石が船の給水設備に詰まったため朝便は欠航、昼便から運行再開。
それを聞いて、安堵のため息をつくことができました。
“イラブ―”琉球王朝で愛された高級食材
「久高島」に到着したあとすぐに実施したのは、旅の目的であった“イラブー料理”を食すことでした。
“イラブー“とは、ウミヘビのことを指し、琉球王国の宮廷料理で使われていた高級食材です。
捕まえることが許されていたのは、この島のノロと呼ばれる、女性の祭司だけでした。
喫食したお店は「食事処とくじん」、港から近く、食べログの評価も悪くありません。
“イラブー汁定食“はモズクやサツマイモの天ぷら、サラダ等がついて2300円。
地産地消だから成立する低価格です。
肝心の“イラブ―汁“は、見た目は味噌仕立てのおでん。
ウミヘビのウロコがついたままなので抵抗感がありましたが、当時の庶民は口にすることができなかった高級食材。ありがたくかぶりつきました。
お味は、乾燥したニシンの癖を強くした感じで、口の中で「もぁ~」が広がりました。しかし、ランチに2000円以上払っているうえに、滋養強壮にいいと言われるので私に完食以外の選択肢はありません。
半分くらい食べた頃には臭みにも慣れて、デザートのお餅までオイシクいただけました。
”イラブ―”は相当癖の強い素材なので、1週間燻(いぶ)して臭みを消している。そんな食べ物でした。
「精がつく」という話を聞いていましたが、具体的な体の変化を感じられなかったのが残念な点でした。
私が鈍いだけなのかもしれませんが‥‥(汗)
久高島一周よりタメになった老人の戦争体験談
宿に荷物を置かせてもらってから、レンタル自転車で島内を一周しました。
島の外周は7㎞。舗装されていない道が半分くらいありますが、平坦な地形なので2時間もあれば周り切ることができます。
島一周して一番の収穫は、北側の漁港を見下ろす場所で景色を眺めている老人の話を聴けたことでした。
老人の名前は新庄さん(90歳)、15歳のときに志願兵として沖縄で軍事教練を受けてから沖縄の部隊に配属。銃を扱うこともなく、与えられた仕事は塹壕内の天井や壁を支えるための木の伐採と輸送。
最後には銃無しでアメリカ軍の待ち構えている岸壁に夜間突撃。
丸木舟で海岸に音を立てずに近付いたが、米軍は収音マイクで音を拾っていた。突然、照明弾が打ち上げられて辺りは昼間のように明るくなり、機関銃をあびせられた。
無傷で岸壁に辿り着けるのは2/10人。なんの為に突撃したのか‥‥(涙)
その後、部隊は組織としての体をなしていないため解散を命じられ泳いで島に帰ったのだとか。
戦争時代を生き抜いた人の生き抜く力に脱帽するとともに、亡くなった方々のお陰で現在の平和な日本があることに気づかされました。
それと同時に「負け戦は、より多くの犠牲を支払う」「だからこそ早めに手を打つことが大切」とっても大切な教訓を頂きました。
戦後、新庄さんは、国会議員に働きかけて「久高島」に港湾施設を作ってもらうと共に、自ら本土と島を結ぶフェリー会社を設立。
お子さんを立派に育てた現在もフェリー会社の会長としてお仕事をされています。
”イラブ―”が燻製になるまで
宿の方にイラブ―のことについてたずねたら、加工に携わっていたおばあちゃんから話を聴くことができました。
“イラブー漁”が実施される期間は9/24〜年内 (在庫が余っている場合は早めに終了)
“イラブー“は臆病な性格、夜の干潮前後、産卵のために岩の上に登って来るのを月明かりの下で待ち構えて捕獲する。
捕獲したモノは200匹集まったら、町はずれにある燻製小屋で7日間燻す。
1シーズンで8回(1600匹)燻製にしたのが最高記録。
燻製を待つ間に卵を産む個体もいる。卵は煮て食べると絶品だが市場に流通されることはない。
オス、メス値段の違いはないがオスの方がうまいと言っている人もいる。
昔は燻製にするのは男の仕事、大量の薪を集めて火の晩をしていた。
不思議な食材“イラブ―”の製造工程が分かってスッキリしました。
フェリーの待ち時間に飲める“イラブ―汁”
翌日、久高島のフィリー乗り場でチケットを購入しようとしたときに“イラブ―汁”と書いたポップ広告が目に止まりました。
お値段は570円、提供までの時間は5~6分だったので注文しました。
提供されたのは具材なしの“だし”、味を加減できるように塩が添えてあります。
一杯の“だし汁”で、とっても体が温まり元気と貴重な経験を頂くことができました。
グロテスクなモノが苦手で“イラブ―料理“に抵抗を持っている人も手軽に挑戦できるメニューだと思います。
まとめ
沖縄フリークの方々からよく発せられるキーワード「久高島」。
興味を持ってから来島するまでに1年かかりましたが、1泊2日の旅を通して多くの学びを得ることができました。
また、戦争経験者の貴重な話に耳を傾けて、そこから物事を考える重要性を感じました。
久高島滞在期間:2021年12月3~4日
神の島、久高島、知人も行ったことがあるそうです。行くだけで空気が違うとか?、観光スポットとしても最高かもです。ご紹介ありがとうございました
久高島、マイナーな離島ですが、その分、行ったことある人は希少性が生まれます!