インドの首都ニューデリーから北西450㎞にあるアムリトサル。
パキスタンと国境を接している土地柄、昔から交易の拠点であるとともにヒマラヤを水源とした穀倉地帯であり国の食料生産地です。
パンジャブ州の中で1番大きな都市、アムリトサルの人口は100万人。
この町の特質すべき点はシーク教徒の総本山「ゴールデンテンプル(黄金寺院)」が在ることです。
ゴールデンテンプルの建立が始まったのは1574年。完成まで30年を要した巨大な施設は400年以上経過してもその荘厳さが保たれている。むしろ、増していると想像します。
今回はインド北部、アムリトサルのゴールデンテンプルについてお伝えします。
空港からゴールデンテンプルへの移動は無料送迎バス
アムリトサル、聞き慣れない地名ですが20年以上前に読んだ旅行記の中で強い印象を受け「いつかは訪れたい」と温めていた場所です。
2023年、コロナの出口もみえてきた頃、一念発起、ビザを取得してインド、パキスタン陸路の旅にでかけました。
アムリトサルはニューデリーから1時間半、国際空港に到着しますが空港内に両替所は見当たりません。私は、デリーのインディラ・ガンディー空港の乗換え時に両替を済ませましたが、ダイレクトに到着される方は現地通貨の用意をしてくることをお勧めます。
空港から寺院までは約10㎞。タクシーで550Rs(940円)かかる距離ですが、ありがたいことに無料の送迎バスがでています。
乗り場は到着出口を出た道路脇。運行時間は朝9時~夜中0時の毎正時
使われているバスは比較的シートピッチの広いインドの自動車会社TATA製。
外観も内装もインドにしてはキレイに保たれている印象でシーク教徒のドライバーも親切な対応です。
世界的な成功を収めた宗教「シーク教」
ゴールデンテンプルまでの乗車時間は30分。
送迎バスはゴールデンテンプル近くの広場に停車します。他の車両が乗り入れられないエリアまで入っていけるためアクセスに便利で助かります。
下車した場所から寺院入り口までは500m。
参道は、靴屋、服屋、食べ物を扱うお店や屋台が密集していてバザールのように活気があります。
店先で仕事を切り盛りしている方の多くが頭にターバンを巻いているシーク教徒男性です。シーク教徒の男性は、髪はもちろん髭を剃らないため総じて立派な髭を蓄えています。なかには、口ひげの先端を束ねて上に跳ね上げるオシャレな方も見かけます。
パンジャーブ州の58%がシーク教を信仰していますが、参道を歩く男性の大多数がターバンを巻いていません。つまり、ゴールデンテンプルはインド人にとって人気の観光スポットでもあるのです。
シーク教徒の総数はおよそ3000万人。世界で5番目に大きな宗教です。
立派な宗教施設を開放することで、インド国内はもちろん世界中から1日数万人の信者や観光客が訪れ、シーク教徒のプロモーションができるうえに町にお金が落ちる仕組みができあがっています。
きっと、数百年前からこの町は賑わっていて、この先も繁栄していくのだと思います。
大成功した宗教であり、信仰が厚くなれば厚くなるほどアムリトサルは繁栄することになります。
黄金寺院入場作法
ゴールデンテンプルの中心にあるのは120m×150mの大な池。
池の周りは幅15mの大理石のテラスで多くの人々が祈りを捧げています。
男性信者は水着に着替えて沐浴します。泳げない人でも入水できるように水の中でも掴まれる鎖が張られています。
池の中央には、装飾に450㎏の金が使われている黄金寺院が建っています。
真っ白い大理石とゴールドのコントラストが絶妙で水面に映る寺院がとっても神秘的です。
アムリトサルの意味は「甘露の池」。宗教的には立派な建物よりも池の方が尊いのかもしれません。
ゴールデンテンプル入場にあたってはいくつかの注意点があります。
異教徒に入場を許してくれているのですから、こちらもルールを守って行動する必要があります。
入場に必要なお作法は下記の4つ
- ショートパンツなど足を出した服装を避ける
- 靴や草履、タバコ製品を持ち込まない
- 頭にターバンや布を巻いて髪の毛を覆い隠す
- 入場前に手を洗う
私は、靴をコンビニ袋に入れて素足で通過しようとしたら、身長190㎝の保安係に止められ、靴を荷物預け所に置いてくるように指導されました。
荷物預け所は入り口の150m手前にあり係員がテキパキと仕舞って金属製の引き換えタグを渡しくれます。
「預け賃は無料であっても外国人はチップを求められる?」と心配していましたが、係員は坦々と業務をこなし、そんなそぶりもありませんでした。
頭に巻く布は、出入り口付近にレンタル用の布が入ったカゴが設置してあり、それを拝借できます。
ゴールデンテンプルで一番驚いたことは、食事の提供
池の東に設置された「Langar Hall This Side」と書かれた看板が目に入りました。
「Langar」とは「公共の無料簡易食堂」を意味するようですが、訪れたときは意味が分かっていませんでした。
人の流れに乗って進むと、金属製の皿を渡され、「もしや!」と思ったところで、スプーンとカップを渡され着座すると3種類のカレーと甘く煮詰めたライス、主食でのチャパティが乗せられます。
大量のゲストに一気に食事提供するため配給の仕方がとってもシステマティック。
係員は大きなバケツに入ったカレーをオタマですくって配給。水は高さ50㎝の金属製のタンクを台車に乗せてボタンを押しながら注いで周ります。
喫食する方は、黙々と平らげて次々と離席します。もちろん、お代わりしたい人はカレーもチャパティも遠慮することなく食べることができますが残すのはマナー違反。
私は慣れない国でお腹の調子を悪くしたくなかったので少量しか食べませんでしたが、お味はそこそこ美味しい。全ての食品が過熱されている。食堂の清掃状況、給仕係が食品を素手で触ることを避けていることから衛生観念は高い印象を受けました。
私が訪れた時間は13時。一番混む時間で1回600人が食事をしていました。
1時間に4回入れ替わると=2400人。食堂が24時間稼働していることを考えると1日3万~5万食が提供されていることになります。
ちなみに、主食であるチャパティ1枚に使う小麦粉は40g。1人2枚食べると80g。10万枚食作るのに必要な量は2t。1日1㎏入りの小麦粉が2000袋消費されることになります。
また、チャパティを作るのには大量のボランティアスタッフや燃料、水が必要となります。
これほど大量の食事を一気に提供し続けられる食堂も世界でここだけなのではないかと思います。
食事を終えた後は、ゲストは空になった食器を持って食器洗所に移動。食堂清掃員は巨大モップで一気に床をふきあげて次のゲストの準備をします。
快適な夜の参拝
ゴールデンテンプルの見どころは昼間だけではありません。夜は夜で見ごたえがあります。
ライトアップされた建物、水面に写る景色がとっても幻想的。
直射日光を避けられるうえに気温が涼しくなっているので快適に周ることができます。
夜の時間は、昼間に見ることができなかった「信者が集団で歌を歌いながら行進する」宗教的な儀式が執り行われていました。
まとめ
20年前から気になっていたゴールデンテンプルをやっと訪れることができ大満足な1日でした。
こんなに素晴らしい施設なのに入場無料。空港からの送迎、食事の提供、参拝後半にはココナッを煮詰めたスイーツが配られます。
いたせり尽くせりで、シーク教によいイメージを持ちました。
入場無料で、どこからこの資金が捻出されているのか考えると、お賽銭が集まる外に昔からあるインドの商業集団「印橋(いんきょう)」にシーク教徒が多く、大成功された商人からの寄付に支えられているように思いました。
施設を訪れて感じることは個人の価値感によって異なると思いますが、私は上記のような感想を受けました。
興味を持たれた方は体が動けなくなる前に実物を見ておくことをオススメします。
訪問時期:2023年4月
ゴールデンテンプル凄いですね
行ってみたいです^_^
一見の価値ある場所です!